『Cui Cui』川内倫子さん
過去に、デザイン会社で働いていたことがあります。
同期入社した川内倫子さんは、今や国際的にも注目される写真家としてご活躍です。
川内さんの写真集『Cui Cui』を久しぶりに眺めていて、私たちの心の原風景のようでもあり、またほのぼのとした気持ちになりました.。.:*・°
この写真集は倫子ちゃんがご家族を、1992年から2005年まで撮影したものです。どんなに平穏に見える家庭であっても、生病老死という流れは避けきれません。川内家の歴史の一コマが伝わってきます。
巻末の倫子ちゃんのメッセージがすてきだったので、ご紹介させていただきますね。
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15才まで8人家族だった(中略)
一昨年に祖父が亡くなって、義姉がすぐに妊娠した。
赤ちゃんパワーは素晴らしく、甥っこが誕生したときの周りの喜びようには驚いた。
自分が生まれてきたときも、こうやって祝福されたんだな、と思うと不思議だ。当たり前のことなんだけど、つい忘れてしまう。
しょうもないことですぐに言い争ったりもするけど、誰かががまんしたり、流したりしてやり過ごしている。
なにかおいしいものを近所の人に分けてもらうと、また家の中でそれを分け合って、おいしいおいしいと言い合ったりする。
そんなことを繰り返す日々。
それだけのことなんだけど。
東京で一人暮らし歴が長くなると、そんなことがキラキラして見えたりするし、実際そうだ。
時間は誰にも等しく流れていって、家族のかたちも変わっていく。
自分も8人家族には戻れないけど、周りの大人に愛されて、守られて育った記憶は消えない。
これから自分が死ぬまでの間、その記憶に支えられていくと思う。
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家族のぬくもり、周りの人との温かい心の交流は
精神的な安定感をもたらしてくれますね。
昔は親戚づきあいなどが面倒だな…と感じていましたが、
最近は、少しずつ考えが変わってきました。
私が尊敬する師が、このようにおっしゃっていました。
「人の生活として最も尊いのは、地元に根付いて田畑を耕し、地域を発展させ、一族を増やして養うことです。地方の土地は若い人でも購入可能です。地方部では多くの農業支援や子育て支援が行われています。土地を耕し、地の先祖を守り、子孫を残す。そこで採れた産物をその土地で費やし、地域ごとの小さな単位の経済を作り上げる。今、日本や世界は閉塞感しか見えていないかもしれません。しかしそれは作り上げた価値観の中での行き詰まりです。新しい価値観は何か。それは本来の人間の生活に立ち返ることなのです」とのこと。
やはり私たちの原点はここなのでしょうね。
倫子ちゃんの写真に郷愁を感じて、ほっとさせられるのも、人間本来のあり方を思い出させてもらえるからではないかと感じました.。.:*・°