窮地に陥っても人生を投げ出さないためには/アブの話
私たちの人生は、時に思いがけないことが起こりますから、にっちもさっちもいかないというご経験をされた方も多いことでしょう。
私たちが深い悩みを抱えるのは、解決の道が断たれてしまった・・・と感じる時ですが、少し視点を広げれば、全く違う扉が開かれることがあるというエピソードを、七田真先生の『(スピード脳」の高め方、ひらき方』からご紹介しますね:.。*.・゚
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■虻(アブ)の話
風外和尚は、江戸時代の終わりの名僧で、大変な智恵者と尊敬されていました。
そこへ川勝太兵衛という豪商が相談に行ったのです。
太兵衛は資産家で、船を所有しており、物を買いつけては船で運び、他の土地で売るという商売をしていました。
ところが、嵐に遭って船が沈んでしまい、もう破産するしかないという破目に陥っていたのです。
太兵衛は、風外和尚の寺を訪ね、自分の窮状を訴えました。
ところが、和尚は「ふん、ふん」とうなずくばかりで、あらぬ方向を見るばかり。
ろくに身を入れて聞いている様子がありません。
太兵衛は思わず、
「和尚。私が一生懸命困った窮状を訴えているのに、そっぽを向いておられるのは、ずいぶん失礼じゃありませんか」と声を荒げました。
すると和尚は
「いや、すまん、すまん。わしは、ついあのアブを見ていた。
ここはボロ寺だから、すき間だらけでどこへでも出て行ける。
だがあのアブは、外に出ようとして一生懸命飛んでは障子にぶつかり、ぽてんと落ちると、またブーンと飛んできて、また同じ場所にぶつかっている。
さっきからずっと、その繰り返した。
ちょっと目を転じると、すぐに広い外へ出られるのに、人間も案外、あのアブと同じことをしているのかもしれんなあ」
太兵衛は、和尚にきつい言葉を吐いたことに冷や汗をかいて、
「ああ、わかりました。ありがとうございました」と礼を述べました。
和尚は太兵衛に、アブのたとえを通して「目を転じなさい」という生き方を教えていたのです。
見方を変えるなら、どん底を体験するというのは得がたい宝です。
困難は人間としての幅を広げる絶好のチャンスです。
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「もうおしまいだ・・・」と人生に絶望してしまうのは、視野が狭くなって、出口が見えなくなってしまう時ですね。
実際にこの話を聞いて、男の人にふられて、傷心のあまり自殺をしようと考えていた女性が、自殺を思いとどまった例があるそうです。
他にも京都大学理工科を受験しようとしていた高校生が、色盲で入学できないと知らされて絶望し、やけを起こして非行化しようとしていた時に、このアブの話を聞いて、自分の進む道は理工科でなければならないということはない、と悟ったという体験もあるそうです。
アブの状態になった時に、私はいつも複数の本を読むのですが、必ず新たなヒントや解決方法が見つかり、別のドアから出る方法を知ることができました。
窮地に陥ったおかげで、問題が起きる前よりも状況が良くなったという体験も何度もあるのです。
トラブルはできれば避けたいものですが、「ピンチはチャンス」という言葉の意味が、年齢を重ねるごとによくわかるようになったことはありがたいことです.。*.・゚