家庭崩壊、学級崩壊はこうして起こる/木下晴弘さん
今日は、家庭のしつけで最も大切な規範(norm=ノーム)作りについて、木下晴弘さんのご著書『できる子にする「賢母の力」』からご紹介しますね。
これは学級崩壊、組織の崩壊さえもたらしてしまうほど重要な内容ですから、ぜひとも繰り返し読んでいただければと思います.。.:*・°
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せっかく作った理念にもかかわらず、それが形骸化している企業がたくさんあります。
家庭を一つの組織として考える時に、どうしても伝えておかなければならない言葉があります。それは規範(norm=ノーム)という言葉です。
規範とは、その組織において【暗黙のうちに了解されているルール】のことです。
私の塾講師時代の話です。
ある新人講師が、黒板に文字を書きながら解説をしていました。
重要なポイントの説明にさしかかった時、新人講師はこう指示を出しました。
「大事な解説をするから、鉛筆を置きなさい」
ところが、数名の生徒が鉛筆を置かずにノートを写していたのです。
新人講師は再び「ちゃんと鉛筆を置けよ~」と言いつつ、数名の生徒がまだ鉛筆を握っているにもかかわらず、解説に入ってしまったのです。
この瞬間、このクラスにはあるノームが発生します。
それは「この先生が鉛筆を置けと言っても、鉛筆は置かなくてもよい」というノームです。
何を些細な、鉛筆ぐらい・・・と思うかもしれませんが、このノームはやがて成長をはじめます。
そして数週間後、このクラスには「この先生の指示には従わなくてもよい」というノームができあがっているのです。
だから、新人講師には何度もこう言い聞かせていました。
「君がいったん生徒に指示を出したならば、クラスの全員がその指示に従うまで、絶対に次の指示を出してはならない」と。
1度目の「鉛筆を置きなさい」という指示で、まだ鉛筆を持っている生徒がいれば、私はその生徒たちに向かってこう言います。
「今、先生は鉛筆を置けと言ったけど、聞こえているかな?」
しかし、もしもまだ鉛筆を置かない生徒がいた場合には、
「鉛筆を置きなさい!!先生の指示に従えない者は前に出てこいっ!!」
この瞬間に、このクラスにはこんなノームが発生します。
「この先生が鉛筆を置けと言ったら、鉛筆を置かねばならない」
このノームも成長をはじめ、数週間後このクラスでは「この先生の指示には従わなければならない」というノームができあがるのです。
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この本は、一人息子が小学生になったときに読んで「なるほど!」と膝を打つほどに感動した内容です。
実は息子が保育所に通っていた頃、とにかく元気いっぱいのやんちゃ坊主で、私の言うことはあまり聞いてくれません。
ちゃんと団体行動が取れるのだろうかと、内心心配していたんです。
ところが保育所に行くと、ちゃんと先生の言うことを聞いているではありませんか。
お若い保育所の先生は、エネルギーに満ちあふれている子どもたちを、どうやってあんなに上手にまとめていらっしゃるのだろう?・・・と七不思議のように感じていたのです。
木下晴弘さんのご著書を読んだ時に、私の脳裏に一番に浮かんできた光景は、保育所の参観の時に、先生が穏やかに「静かにしなさい」と言って、全員が静かになるまで、数分じっと待っていらして、決して次の言葉を発しなかった姿でした。
これこそが、まさにノームだったのだと気づきました。
保育所の先生は、まだお若い女性の先生で、いつもニコニコされていて、決して大声を上げることもなく、本当にすごいな・・・といつも思っていたのですが、その理由が氷解した瞬間でした。
木下晴弘さんの言葉を、最後にもう一度ご紹介しますね。
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一度ノームができあがってしまうと、そのノームをくつがえすのは容易ではありません。信じられないほどのパワーでもってしても、くつがえらないノームさえ存在するのです。
そして恐ろしいことに、このノームというものは、ほんのささいなことから発生し、成長してしまうのです
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学級崩壊や組織の崩壊は、組織のリーダーが【肯定的なノームを作り出せなかったこと】というたった一つの原因に集約されるそうです。
改めてこれを知った時に、親自身が規範を貫くことの大切さが身にしみて理解できました.:*・°